志賀直哉 『灰色の月・万暦赤絵』

灰色の月/万暦赤絵 (新潮文庫 し 1-6)

灰色の月/万暦赤絵 (新潮文庫 し 1-6)

 わが尊敬する志賀直哉の短編私小説集。ちょっとばかり読んでから時間が過ぎてしまい、具体的な感想を書くに忍びない。というか書けない。

 だから今日のところは抽象的な内容に終始したいと思う。また、近々図書館に行って同じ本を借り、具体的な感想を書きたい。

 
 志賀直哉の作品は私小説が多い。私小説というよりも随筆的なものが多いようにも思う。それも飾らず、マイペースで、自分は悪くないという意識の塊だ。すべて実はなのかは知らないが、内容を真に受けるのであれば、浮気も堂々とするし、それを奥さんに割りとサラッと告白してしまうし、舌の根も乾かぬうちに小説にして発表してしまう。挙句に奥さんには「読まないほうがいいよ」というコメント。そしてその小説には「まだ未練がある」と軽く書き流す。

 まさに『女遊びも芸の肥やし』だ。そして、俺だけかもしれないが、志賀直哉がそういった内容のことを書いても嫌悪感を感じない。それが文章・文体によるものなのか、単純に志賀直哉が好きだから、贔屓目で見てしまうのかは分からないが、とにかく許せるのだから仕方が無い。

 初めて志賀直哉を読む人にはこの本よりも「小僧の神様」が収録されたものをお勧めする。