太田 潤 『野宿料理の本』

野宿料理の本―ナチュラル・クッキング (Outrider book)

野宿料理の本―ナチュラル・クッキング (Outrider book)

 小説ではないのだけど、せっかく買って読んだのだから、感想を書きたいと思う。

 本書はタイトルの通り、野宿時に作りたい料理本だ。野宿って言っても浮浪者という意味じゃない。あえて言えばキャンプ時に作るという意味なんだけど、正確にはそれとも違う。キャンプと野宿の違いが分からないと本書の立ち位置が見えてこないと思うので、説明したいと思う。
 言葉が与えるイメージの問題なんだけれど、今の時代にキャンプというとオートキャンプをイメージする人が多いと思う。家族か仲間でカレーやバーベキューといった料理をワイワイと作り、過ごすアレだ。だから、キャンプ料理というとそういうワイワイと作るやつをイメージする。キャンプ自体が目的だから荷物も多いし、キャンプ場で過ごす時間が長い。
 一方野宿はといえば、(キャンプ場に泊まるのか、純粋に野宿するのかという違いはともかく)一人か数人で質素にやるものだ。あくまで昼間に旅をするのがメインであり、泊まるためだけに野宿するというスタンス。だから、大荷物を広げたりもしないし、あれこれ食べ物を持っていかない。少く、簡単な用意で済ませる。

 この違いが理解できると本書の立ち位置が見えてくる。この本はあくまで野宿料理だから、複雑なレシピは一切無い。鍋が三つも四つも必要なものもない。3時間も4時間も煮込むようなものも、もちろんない。スーパーでサラッと買えて、サッと作れるものが紹介されている。
 しかもサッと作れるわけにはうまいし、作る楽しみのあるレシピが多い。他にも野宿系の料理本はあるのだけど、極端に手抜き料理(暖めるだけとか)で作る楽しみは少なかった。

 長年旅をしてきた著者だからこそ出来た一冊だと思う。料理の写真はみんなカラーで、家で作ってみたいものも多い。良書だと思う。